「そんなばかな!」
秋山誠さん(仮名)は、妻の和美さん(仮名)が偶然見つけたインターネットのページを印刷したプリントを見て、思わず青ざめてしまいました。
「誤算だわ。5千万円もするのよ。そのまま課税されたら、とても税金なんて納められやしないわ」
先月父の真一さん(仮名)が亡くなり、生前真一さんが住んでいた自宅は底地も含め誠さんが相続し、夫婦で移り住む手はずでした。底地の評価額はおよそ5千万円でしたが、「小規模宅地等の特例」を適用することで他の遺産を含めても基礎控除額(3000万円+600万円×1人=3600円)を下回る計算でした。
一体、秋山さん夫婦に何があったのでしょう?
実は秋山さんの自宅は、4年前に購入し名義を息子の和彦さん(仮名)としていたマンションです。
小規模宅地等の特例は、面積で一定の制限がありますが、最大で評価額の8割を減額できるため、相続対策としては非常に効果的な手法です。しかし、適用にあたって一定の要件を満たさなければならないため、注意が必要です。例えば、被相続人の居住の用に供されていた宅地等を配偶者以外の同居していなかった親族が相続する場合、死亡時から申告期限まで有していることに加え、相続する人が元々自分の持ち家がないこと、すなわち借家であることが原則とされています。しかし、平成30年4月1日以降の相続にあたっては、これに関する規定が下表の通り改正されることになり、その結果秋山さんのようなケースでは小規模宅地等の特例の適用要件を満たさなくなり、減額できなくなってしまうのです。
(ただし、令和2年3月31日までに開始する相続については、平成30年3月31日時点で相続が開始したと仮定して改正前の要件を満たしている場合、経過措置として小規模宅地等の特例の適用が認められます)
節税対策は、制度とのいたちごっこという側面もあるのです。
取得する人 | 改正前 (平成30年3月31日まで) | 改正後 (平成30年4月1日以降) |
配偶者 | 無条件で適用 | 変更なし |
被相続人と同居していた他の親族 |
1. 相続開始前から申告期限まで当該住宅に住んでいること 2. 当該住宅の宅地を申告期限まで保有していること |
変更なし |
被相続人と別居していた他の親族 |
1.他の相続人に被相続人との同居者がいないこと 2.相続開始日から3年以内に、取得者またはその配偶者が国内に所有する住宅に住んだことがないこと 3.当該住宅の宅地を申告期限まで保有していること
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1.他の相続人に被相続人との同居者がいないこと 2.相続開始日から3年以内に、取得者またはその配偶者、三親等以内の親族、自己と特別の関係がある法人が国内に所有する住宅に住んだことがないこと 3.当該住宅の宅地を申告期限まで保有していること
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