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「困ったのぉ。このままじゃとても払えやせんぞ」
 藤島大介さん(仮名)と妻の光代さん(仮名)は、相続のシミュレーションを見て頭を抱えていました。代々所有する土地(大介さん名義)以外にこれと言った財産もないのに、2百万円以上も税金がかかってしまうという内容だったのです。 一人息子の和樹さん(仮名)は大のギャンブル好きで借金だらけのため、とても納税資金など期待できません。
「養子なんかはどうかしら。兄さんの末っ子の弘樹君(仮名)は優しくていい子だし、和樹の代わりに私たちをよく世話してくれているし」
 相続対策として用いられる事の多い養子縁組ですが、相続人の頭数を増やす事で基礎控除額(3千万円+6百万円×相続人数)を上げ、課税される金額を下げる事が出来るからです。
 しかし、ここで注意が必要です。民法上は人数に制限はないのですが、税法上は実子がいる場合は1人、いない場合は2人までという制限があります。つまり、実子がいない場合で養子が3人いても、相続税の計算においては3人中2人までしか相続人として認められません。
 もう一つは、養子が負担する相続税については通常の税額に加えて20%相当額が加算されると言うことです。たとえば養子の本来の負担分が100万円なら、120万円を納めなければなりません。もともと配偶者や親・子以外の人が遺産を受け取る時にこのような上乗せがなされるのですが、養子も対象となります。
 ちなみに、養子縁組には普通養子特別養子の二種類があります。普通養子は手続が比較的容易であることと、養子縁組しても従来の実の親子関係は継続するのが特徴です。これに対し特別養子は普通養子と違い家庭裁判所の審査が必要で、養親の実子と法律上同じ扱いとなり、従来の親子関係は消滅してしまいます。一方、特別養子であれば税法上でも実子とみなされるので、相続人について前述のような人数の制限も税額の上乗せもありません。
「話は聞いたよ。色々大変なんだってね」
 そこへやって来たのは、一人息子の和樹さんでした。
「どうせならさ、10人ぐらい里子を迎えたらどうだい? 特別養子なら実の子と同じ扱いなんだろ? うまくやれば税金もかからないかもよ」
「馬鹿言うな! そんな大勢をどうやって養えと言うんじゃ。ただでさえお前の借金でウチは火の車なんじゃぞ!」


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