景山妙子さん(仮名)を看取ったのは、末娘の喜子さん(仮名)でした。喜子さんが長年妙子さんと暮らした土地付き建物(自宅)はともに妙子さん名義です。しかしある日、三人の兄たちが突然喜子さんの許に押しかけて、こう切り出します。
「母さんの家を全部売るから、出て行ってくれ」
「何言ってるの! そんなこと出来るわけないじゃない」
「俺たちだって四分の一ずつ相続する権利があるんだぞ! お前が財産を独り占めするつもりか?」
いわゆる「争続」の一例です。通常、相続財産は配偶者が二分の一、残りの二分の一を子どもの頭数で等分するとされていますが、これはあくまで原則であり、後述する当事者間の「遺産分割協議書」で決めることも可能です。
しかし金銭等と違い、不動産は相続人で山分けするわけにはいきません。この場合の解決策として、例えば以下の方法が考えられます。
・喜子さんが自宅を引き継ぐ代わりに、それぞれの兄に自宅の四分の一に相当するお金を払う(代償分割)
・自宅を四人の共同名義にして、喜子さんが兄に家賃相当額を払う
いずれにせよ、相続人間できちんと合意し、相続財産の分配方法を遺産分割協議書という形で残すことが不可欠ですし、相続税の申告にもこれを添付しなければいけません。相続税の申告期限は相続開始日(=被相続人の死去した日)の翌日から十ヶ月以内ですので、それまでに相続の決着をつける必要があります。
もし申告期限までに決着がつかない場合は、とりあえず法定相続分(冒頭のケースであれば四分の一ずつ)で相続したと見なして申告・納税する事になります。この場合、申告期限の翌日から三年以内に遺産分割を決着して、実際の内容に準拠した形で再度申告しなければなりません。三年を過ぎて申告がなくても罰則はありませんが、財産評価で不利になったり財産のスムーズな処分が出来ないなど、様々な弊害が生じます。特に事業用不動産であれば、せっかく本業が順調でも事業の継続そのものが危ぶまれかねません。遺産分割が解決しないままの状態は、当事者全てにとって百害あって一利なし以外の何物でもありません。
相続を「争続」にしないために一番欠かせないのは、円滑に遺産分割を進められる信頼関係ではないでしょうか。
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